振返り:『白の仔』

 今回制作した『白の仔』の完成発表と同時に、制作中のことを振り返ってみます。

 この作品は、いかに素早くアニメーションを制作できるかを知るために作りました。去年制作した『生活支援アプリケーション「オレのヨメ」』は、勉強と実践を繰り返しながら、最終的に1年4か月で完成しました。

 結論として、あまりにも時間がかかり過ぎると知りました。


生活支援アプリケーション「オレのヨメ」

 私は表現のためにアニメーションという媒体を用いたいのに、これではいくら時間があっても足りない。そこで、前作よりも短く且つ簡潔に作ることを目標にし、どこまで表現できるのかを研究することにしました。

 初めに『白の仔』は無色の背景と登場人物で作ることを決め、多くの工程を省いてみました。これにより表現の自由度が最小限にまで狭められ、発想力をフルに使うことになりました。しかし、後半には夜空や水面の様な背景を入れてしまい、完全な無色とは言えないものになっていきました。

 ただ、夜空や水面は彩色する代わりに、編集や撮影の工程を省くことを意識して作りました。例えば、宙に浮かぶ色の玉はスライドで表現し、水面の反射は穴だらけの無地にグローを施し回転させる程度にしました。つまり、簡単な撮影で出来る細かい表現を作ったのです。

 振り返ると簡単すぎたのではと思ってしまいますが、それこそが今回の課題でした。目標を大きく持つことも大事ですが、逆に限界まで怠けるのはより難しいです。実験として制作したとはいえ、結局は拘りを捨てられず、余計な労力を支払う結果となりました。

 今後の課題とするならば、「拘る箇所をあらかじめ決めておく」といったところでしょう。本作で拘ってしまった所も、途中で入れたくなってしまったことが原因です。安定した制作をするためにも、絵コンテの時点で「これ以上は何もしない、絶対に!」と決めておくようにすべきでしょう。